琵琶湖のほとりに広がる、歴史情緒あふれる城下町・長浜。
この地こそ、後に天下人となる豊臣秀吉が初めて城主として治めた、出世の原点です。そして、その対岸に神秘の姿をたたえるのが、“神の棲む島”として知られる「竹生島(ちくぶしま)」です。
戦国の世を駆け上がった秀吉の人生は、この二つの地と深い縁で結ばれています。
信仰と神秘が息づく湖上の聖地「竹生島」
長浜から琵琶湖を望むと、静かに浮かぶ小さな島「竹生島(ちくぶしま)」が見えてきます。古来より、この島には龍神などの神々が棲むと信じられており、弁才天や観音信仰の聖地として多くの人々に崇められてきました。
竹生島には、浅井氏や豊臣秀吉も信仰を寄せ、織田信長が参拝したと伝わる「宝厳寺(ほうごんじ)」や「都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ)」をはじめ、数々の歴史的建築が今も息づいています。
国宝に指定されている宝厳寺の「唐門」や、重要文化財の「観音堂」、そして2000年に約350年ぶりに復元された「三重塔」など、見どころは尽きません。
◾️宝厳寺
宝厳寺(本堂)
724年に聖武天皇の勅願で創建された古刹
出世街道を駆け上がる若き豊臣秀吉が戦に勝ち続け天下を目指すその歩みの中で、この竹生島の弁才天に深く祈願していたと伝えられている
豊臣秀吉と深い縁を持つ歴史的な遺構として知られているのが、竹生島の中心に静かに佇む古刹「宝厳寺(ほうごんじ)」です。江の島・宮島と並ぶ「日本三大弁才天」のひとつに数えられ、中でも最も古く建立されたことから別名「大弁才天」として古来より信仰を集めてきました。
石段を登りきると現れる本堂は、朱塗りの柱と深い緑に映える屋根が印象的で、自然と調和した優美な景観を作り出しています。その荘厳な佇まいは、訪れる者を圧倒します。
宝厳寺(唐門)
豪華絢爛と言われる桃山様式の代表的遺構
檜皮葺の屋根に黒漆塗りの柱や金箔の飾金具が施され、虹梁(こうりょう)中央の蟇股(かえるまた)には鳳凰や松、兎、牡丹の彫刻が極彩色で彩られるなど、豊臣家の栄華を象徴している
古の佇まいを今に伝える宝厳寺の本堂。その風格ある姿と並び立つように、ひときわ異彩を放つのが「唐門(からもん)」です。これは、豊臣秀吉の大坂城の唯一の現存建築遺構と伝えられています。
慶長3年(1598)に建てられたこの唐門は、かつて秀吉の威光を象徴する大坂城本丸と二の丸を結ぶ回廊「極楽橋」の一部を構成していました。その極楽橋は、金箔や黒漆、精緻を極めた彫刻で彩られ、まるで極楽浄土をこの世に顕現(けんげん)させたかのような豪壮華麗な空間だったと伝えられています。
秀吉の死後、その威光を永遠に刻むため、「極楽橋」の一部は京都の豊国廟へと移されました。しかし、秀吉の子・豊臣秀頼による竹生島(宝厳寺)復興の際、慶長7年(1602)にこの極楽門は琵琶湖の神秘の島・竹生島へと運ばれ、宝厳寺の唐門として新たな命を吹き込まれたのです。
やがて慶長20年(1615)、大坂夏の陣で豊臣家は滅亡し、炎に包まれた大坂城は跡形もなく焼け落ち、かつて天下を掴んだ秀吉の豪華絢爛だった城のほとんどが灰となって消え去りました。
そのため、宝厳寺の唐門は、かつての大坂城の面影を今に伝える唯一の遺構として、私たちに秀吉の栄華を静かに物語り続けています。
【見どころ】弁天様の幸せ願いダルマ

宝厳寺本堂(弁才天堂)のご本尊「弁才天」は人々を幸せに導いてくれる女神と言われています。
ここで手にしたいのが、願いを叶えてくれると評判の「弁天様の幸せ願いダルマ」。
願い事を書いた紙をダルマの中に収めて奉納することで願掛けができます。奉納すると可愛いストラップ御守を持ち帰ることもできます。
アクセス・拝観案内 〜竹生島 宝厳寺〜
滋賀県長浜市早崎町1664
【電話】0749-63-4410
【宝物殿拝観料】大人300円、小人250円(入島料:大人600円、小人300円)
【時間】9:30~16:30(観光船就航時間に基づく)
【アクセス】竹生島港から徒歩約10分
https://www.chikubushima.jp/
【見どころ】舟廊下(ふなろうか)
舟廊下(宝厳寺)
慶長8年(1603)に建立されたと伝わる「舟廊下」。その名は、豊臣秀吉が朝鮮出兵に使用した御座船「日本丸」の一部を利用して建てられたという伝承に由来します。
竹生島の宝厳寺観音堂と都久夫須麻神社本殿を結ぶ全長約30メートルの屋根付き廊下で、桃山時代の建築様式を今に伝える貴重な文化財であり、国の重要文化財にも指定されています。
宝厳寺観音堂から都久夫須麻神社へと続く屋根付き廊下は、幅一間の細やかな造りで、桁行八間の低屋根部分と桁行二間の高屋根部分に分かれています。天井は垂木をあらわにした勾配形の化粧屋根裏で仕上げられ、柱間には連子窓が配されており、光と影が織りなす繊細な趣を醸し出しています。
◾️都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ)
都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ)本殿
内部には、桃山様式の豪華絢爛な装飾が施されており、天井には名匠・狩野永徳光信が描いた華麗な花弁草木絵が残る※内部非公開
竹生島の深奥、静かな琵琶湖の碧に優しく抱かれるように佇むのが、都久夫須麻神社(つくぶすまじんじゃ)です。
本殿(国宝)は、かつての伏見城の遺構とされ、柱や欄間、襖に至るまで、桃山美術の華やかさが色濃く残されています。特に、襖絵や天井画は、桃山時代を代表する絵師・狩野光信の筆によるものと伝えられ、その美しさは訪れる人々を魅了します。
竜神拝所
竹生島の絶景スポットであり「かわらけ投げ」で知られる名所
琵琶湖に面し、島の斜面に突き出すように建てられている
【見どころ】宮崎鳥居でかわら投げを体験!
竹生島にあるかわらけ投げで有名な竜神拝所の鳥居
都久夫須麻神社の御祭神のひとつ「龍神様」が鎮座している竜神拝所(八大竜王拝所)。
本殿の向かいに位置し、琵琶湖に面して島の斜面に突き出すように建てられています。
ここでぜひ挑戦してほしいのが「かわらけ投げ」。土器(かわらけ)に願い事を書き、湖面に突き出た宮崎鳥居へと投げ、投げたかわらけが鳥居をくぐると、願い事が成就すると言われています。
アクセス・拝観案内 〜都久夫須麻神社〜
長浜市早崎町1665
【料金】無料(入島料:大人600円、小人300円)
【アクセス】竹生島港から 徒歩約7分
https://www.chikubusima.or.jp/
竹生島クルーズで長浜〜竹生島を満喫!
竹生島へのアクセスは、長浜港や今津港から出航する観光船を利用します。詳細な運航情報や料金については、琵琶湖汽船の公式ウェブサイトをご確認ください。
◾️琵琶湖汽船を利用
琵琶湖汽船を利用する場合、長浜航路・今津航路・びわ湖横断航路の3つの航路から選ぶことができます。
乗船前後に、長浜城や黒壁スクエア(長浜港周辺)、白鬚神社やメタセコイヤ並木(今津港周辺)などの周辺観光を楽しむのもおすすめです。
【琵琶湖汽船】
・長浜航路(長浜港〜竹生島港 往復)
・今津航路(今津港〜竹生島港 往復)
・びわ湖横断航路(今津港〜竹生島〜長浜港)
クルーズの詳細は運行会社(https://www.biwakokisen.co.jp/cruise/chikubu/price_time/)にご確認ください。
◾️オーミマリンを利用
オーミマリンを利用する場合は、「赤備え船直政」など、特徴的な観光船に乗って彦根港から竹生島へのクルーズを楽しむことができます。彦根港周辺にある、国宝・彦根城や彦根城博物館などの観光スポットもおすすめです。
【オーミマリン】
航路:竹生島航路(彦根港〜竹生島)
クルーズの詳細は運行会社(https://www.ohmitetudo.co.jp/marine/time-price/chikubushima/)にご確認ください。
神仏習合の時代より、弁才天や観音信仰の中心地であり「神の棲む島」として秀吉・秀頼親子をはじめとする多くの人々の信仰を集めた竹生島。
この地で、戦国の息吹と神秘の竹生島の魅力をぜひ肌で感じてみてはいかがでしょうか。
長浜を満喫しよう!
豊臣秀吉ゆかりの地「長浜」は、琵琶湖の絶景と豊かな歴史文化が魅力の街。レトロな建物が並ぶ旧市街と新しい観光スポットが融合した、独特の雰囲気を味わうことができます。
今回は、竹生島クルーズとあわせてお楽しみいただける、湖北エリアの中心・長浜市で見どころ満載のスポットをめぐるモデルコースをご紹介します。