江戸初期を代表する大名茶人・文化人であり、近江小室藩一万二千石の藩主でもあった小堀遠州。
遠州は現在の滋賀県長浜市小堀町に生まれ、学問や和歌、茶の湯といった文化に親しみながら育ったと伝えられています。
日本の茶の湯や庭園文化に大きな足跡を残した遠州の生涯と美意識を今に伝える場所が、長浜市内には点在しています。
静かな町並みを歩きながら、遠州の足跡をたどるひとときを楽しんでみませんか。
秀長に仕えた父のもとで育った遠州
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小堀遠州像(長浜城歴史博物館蔵)
小堀遠州は、天正7年(1579)、現在の滋賀県長浜市小堀町に生まれました。
遠州の美意識を語るうえで欠かせない存在が、父・小堀正次です。
正次は戦国大名・浅井長政の家臣でしたが、浅井家滅亡後は豊臣秀長に仕えた武将として知られています。
秀長は政治だけでなく文化にも理解の深い人物で、和歌や連歌、茶の湯などを重んじた人物でした。そのもとで正次は教養を磨き、文化人としての素養も身につけていきます。
こうした環境の中で育った遠州は、幼い頃から学問や武芸、文化に親しみ、武家の教養を備えた人物へと成長していきました。
◾️武家の教養から生まれた、遠州の美意識
武功だけでなく、美や教養を尊ぶ家風は、やがて遠州が確立する茶道や庭園美の土台となりました。
成長した遠州は、千利休、古田織部へと続く茶道の正統な流れを受け継ぎ、その才覚を高く評価されていきます。
徳川幕府のもとでは将軍家の茶道指南役を務め、慶長13年(1608)には駿府城の作事奉行に任じられました。
すると、城郭や御殿造営における手腕が認められ、諸太夫従五位下・遠江守に叙せられます。この官名に由来し、以後「小堀遠州」と称されるようになりました。
また、遠州は茶道のみならず、書画や和歌にも秀でた文化人でした。
王朝文化の優雅な美意識と茶の湯を融合させた独自の美学を築き上げ、武家社会にふさわしい洗練された文化を広めていきます。
将軍家の茶道指南役としては、茶の湯の作法や空間の在り方を通して、武家社会にふさわしい洗練された美を伝え、茶道と建築・庭園を結びつけた総合的な文化を築き上げていきます。
この美意識は後に「遠州流」 「綺麗さび(きれいさび)」と呼ばれ、わび・さびの精神に洗練と優美さを加えた新しい美として、武家社会に広く受け継がれていきました。
建築・庭園にも残る遠州の美〜長浜ゆかりのスポット紹介〜
遠州は茶道だけでなく、建築や庭園の分野でも卓越した才能を発揮しました。
たとえば、桂離宮、仙洞御所、二条城、名古屋城など、名だたる建築や庭園の造営・改修に関わったと伝えられています。
また孤篷庵(京都・大徳寺)や金地院(南禅寺)の庭園は、遠州の美意識を今に伝える代表作として知られています。
◾️遠州の精神が息づく菩提寺「近江孤篷庵」
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近江八景を模したとも伝わる、近江孤篷庵の池泉回遊式庭園。四季折々の表情も魅力的で、秋には紅色に色づく萩が庭を彩る
近江孤篷庵(長浜市上野町)は、小室(こむろ)城主であった 小堀遠州 の菩提を弔うために創建された寺院です。
江戸時代前期、遠州の後を継いだ小堀家第2代当主・宗慶(正之)が、京都の 大徳寺 から僧・円恵を招いて開山しました。宗派は臨済宗大徳寺派に属します。
寺名は、遠州が京都・大徳寺に建立した塔頭「孤篷庵(こほうあん)」にちなみ、「近江孤篷庵」と名付けられました。
静かな境内には遠州の墓が守られており、落ち着いた佇まいの中に、彼が生涯追い求めた美と精神性が息づいています。
本堂南側には石組みを主体とした枯山水庭園、東側には池泉回遊式庭園が広がり、自然の地形を巧みに取り入れた庭園は、端正で気品ある美を特徴とする遠州の美意識「綺麗さび」を感じさせます。
とくに池泉回遊式庭園は、近江八景を模した構成とも伝えられ、遠州の美の世界を今に伝える庭園として、滋賀県指定名勝にも指定されています
近江孤篷庵
滋賀県長浜市上野町135
【電話】0749-74-2116
【入館料】300円
【営業時間】9:00~17:00、9:30~16:00(11月~3月)
【休館日】毎年11月16日・17日※開山忌法要のため
【アクセス】JR琵琶湖線「長浜駅」下車後タクシーで約30分、小谷城スマートICから車で約10分
◾️長浜市指定史跡「小堀遠州出生地」
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小堀遠州出生地(長浜市小堀町)
長浜市小堀町には、遠州が生まれた場所と伝わる小堀遠州出生地があります。
現在、当時の屋敷などの建物は残っていませんが、石碑と案内板が設置され、この地が遠州の原点であることを今に伝えています。
◾️長浜ゆかりの偉人たちを知る「五先賢の館」
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長浜の歴史と文化を築いた先人を顕彰する五先賢の館では、小堀遠州をはじめとする5人の偉人の功績を紹介しています。
館内では遠州の生涯や人物像、美意識についても丁寧に解説されており、茶道・庭園・建築など多彩な分野で活躍した遠州の全体像を知ることができます。
また、相応和尚(比叡山延暦寺の千日回峰行を創始した修行僧)、海北友松(安土桃山時代、聚楽第に描いた絵画で知られる画人)、片桐且元(賤ヶ岳七本槍の一人で、豊臣政権中枢を支えた武将)、小堀遠州(江戸初期の大名であり、茶道や庭園、建築に才能を発揮した総合芸術家)、小野湖山(明治期の三大漢詩人)といった長浜ゆかりの人物の生涯を、資料や映像を通してわかりやすく学ぶことができます。
五先賢の館
滋賀県長浜市北野町1386
【電話】0749-74-0560
【入館料】大人300円、小中学生150円※長浜市及び米原市の小中学生は無料
【営業時間】9:00~17:00(入館受付は16:30まで)
【休館日】水曜、木曜、祝日の翌日、年末年始
【アクセス】JR琵琶湖線「河毛駅」から車で15分、北陸自動車道長浜ICより車で20分
長浜で感じる遠州の美と歴史
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近江孤篷庵の庭園を望む、静かな時間が流れる空間
長浜市には、小堀遠州ゆかりの寺院や庭園、五先賢の館など、歴史と文化を体感できるスポットが数多く点在しています。
遠州が大切にした美意識や文化は、今もこの町の景色や寺院、庭園の中に息づいています。
史跡巡りや庭園散策、資料館での学びを通して長浜の歴史に触れれば、遠州という人物の魅力もより身近に感じられることでしょう。
長浜市を訪れた際は、遠州をはじめとする武将や文化人たちが残した歴史と美にぜひふれてみてください。